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ピッチャーさつじんじけん

投手殺人事件

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《投手殺人事件(ピッチャーさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 28,243 字 · 57 頁

青空文庫

一服は、光子をムリヤリひっぱるようにして歩きだした。光子も大きいとは云え、六尺ゆたかの一服のバカ力にかかっては、仕方がない。

しかし奇策縦横の自信は胸に満々たる光子、イザという時の用意には充分に確信があるから、このデクノボーのバカの一念で大鹿の隠れ家が分ったら、モッケの幸い、と内々ホクソ笑んで、ひっぱられていった。

その三 尾行

同じ朝の東京駅、七時三十分発博多行急行発車の十分前。金口副部長と羅宇木介が、煙山の姿の現れるのを待っている。

見知らぬ土地での追跡に一人じゃ危いというので、金口副部長も同行することゝなったのである。

「ヤ、来た、来た」

「どれだい。煙山は?」

「ヤに大きなカバン二つぶらさげてやがら。あの男ですよ」

「あの鳥打帽かい?」

「そうです」

四十五六の苦味走った男。この煙山、野球のスカウトで名高いが、本来は、剣術と柔道の使い手、五尺四寸五分のあたりまえの背丈だが、ガッシリした体格だ。スカウトとしては名声があるが、その私生活は、はなはだ世評の香しくない男だ。銀座にキャバレーを経営しているが、ここまで云えば、あとはアッタリマエでしょう、説明がいらぬという人物。