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おしかけにょうぼう
押しかけ女房
伊藤 永之介
線上閱讀伊藤 永之介《押しかけ女房(おしかけにょうぼう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,073 字 · 22 頁
それは秀治の思いちがいに相違ないが、すると初世がまだ嫁に行かないでいることは事実なのだ。たしか、今年はもう二十四になるはずなのに。
これと言つて別に思い出す女ももたない佐太郎であつた。時たま胸に浮んで来るのは、初世ぐらいのものであつたが、その初世にしてからが、敗戦の年も暮れに近ずいたある日、ふと指折りかぞえて、初世ももうじき二十三になるのだと気ずいてから後は、もう子供の一人や二人ある他人の妻としてしか考えていなかつた。
それがまだ嫁がずにいると聞いては、全く意外の感に打たれずにはいられなかつた。佐太郎の胸は、永い冬の間かたくとざされていた池の氷が春の陽に解け出したように、フトときめきをおぼえた。
二
父親の源治が神経痛であまり働けないために、佐太郎は農業学校を卒業すると同時に、田圃に下りて働いたが、教壇からもドン/\戦地にもつて行かれて教員の不足になやみはじめた学校が、多少でも教育のある者の援助を求めるようになり、佐太郎も村では数少い中等学校の卒業者というので、望まれて隣村の高等小学校に、毎日二、三時間の授業をうけもつようになつた。
その女子の高等二年の教室で、初世はもつとも佐太郎の眼をひきつける頬の紅いボツと眼のうるんだ娘であつた。