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しんどうま

振動魔

海野 十三

線上閱讀海野 十三《振動魔(しんどうま)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,354 字 · 34 頁

青空文庫

その夏は、海岸林間学校が相模湾の、とある海浜にひらかれていたので、柿丘夫妻は共にその土地に仮泊して、子供たちの面倒をみていた。一方雪子夫人は、東京の郊外を巡回する夏期講習会の幹事として、毎日のように、早朝から、郊外と云っても決して涼しくはない会場に出向いては、なにくれと世話をやいていたのだった。

そこで僕自身のことを鳥渡お話して置かねばならないが、僕は元来、柿丘と郷里の中学を一緒にとおりすぎてきた、いわゆる竹馬の友というやつで、僕は一向金もなく名声もない一個の私立中学の物理教師にすぎなかったのであるが、幼馴染というものはまことに妙なもので、身分地位のまるっきり違った今日でも真の兄弟のように呼びかけたり、吾儘を云いあうことができるのだった。僕は、この有名なる富める友人のお蔭で、その邸に出入しては、自分の財布に相談してはいつになっても得られないような御馳走にありついたり、遇には独り身の鬱血を払うために、町はずれの安待合の格子をくぐるに足るお小遣を彼からせしめたこともあった。彼が呉子さんを迎えてからは、そう大ぴらには、せびることもできなかったが、彼の代りに出版の代作をしたり、講演の筋を書いたりして、その都度、学校から貰う給料に匹敵するほどの金を貰っていた。