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すてご

捨児

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《捨児(すてご)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,695 字 · 10 頁

青空文庫

だからこそ女は説教がすむと、眼に涙をためたまま、廊下伝いに本堂から、すぐに庫裡へ急いで来たのです。

「委細を聞き終った日錚和尚は、囲炉裡の側にいた勇之助を招いで、顔も知らない母親に五年ぶりの対面をさせました。女の言葉が嘘でない事は、自然と和尚にもわかったのでしょう。女が勇之助を抱き上げて、しばらく泣き声を堪えていた時には、豪放濶達な和尚の眼にも、いつか微笑を伴った涙が、睫毛の下に輝いていました。

「その後の事は云わずとも、大抵御察しがつくでしょう。勇之助は母親につれられて、横浜の家へ帰りました。女は夫や子供の死後、情深い運送屋主人夫婦の勧め通り、達者な針仕事を人に教えて、つつましいながらも苦しくない生計を立てていたのです。」

客は長い話を終ると、膝の前の茶碗をとり上げた。が、それに唇は当てず、私の顔へ眼をやって、静にこうつけ加えた。

「その捨児が私です。」

私は黙って頷きながら、湯ざましの湯を急須に注いだ。この可憐な捨児の話が、客松原勇之助君の幼年時代の身の上話だと云う事は、初対面の私にもとうに推測がついていたのであった。

しばらく沈黙が続いた後、私は客に言葉をかけた。