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ほうろう
放浪
織田 作之助
線上閱讀織田 作之助《放浪(ほうろう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 23,399 字 · 47 頁
仙台の駅から汽車に乗った。汽車弁はうまかった。東京駅で乗換える時、途中下車して町の容子など見てみたいと思ったが、何かせきたてられる想いで直ぐ大阪行きの汽車に乗り、着くと夜だった。電力節約のためとは知らず、ネオンや外燈の消されている夜の大阪の暗さは勝手の違う感じがした。何はともあれ千日前へ行き、木村屋の五銭喫茶でコーヒとジャムトーストをたべると十一銭とられた。コーヒが一銭高くなったとは気付かず、勘定場で釣銭を貰う時、何度も思案して大変手間どった。大阪劇場の地下室で無料の乙女ジャズバンドをきき、それから生国魂神社前へ行った。夜が更けるまで佇んでいた辛抱のおかげで、やっと美津子の姿を見つけることが出来た。美津子は風呂へ行くらしく、風呂敷に包んだものは金盥だと夜目にも分ったが、遠ざかって行く美津子を追う目が急に涙をにじませると、もう何も見えなかった。泣いているこのわいを一ぺん見てくれと心に叫んだ甲斐あってか、美津子はふと振り向いたが、かねがね彼女は近眼だった。
その夜、千日前金刀比羅裏の第一三笠館で一泊二十銭の割部屋に寝て、朝眼が覚めると、あっと飛び起きたが、刑務所でないと分り、まだあといくらでも眠れると思えばぞくぞくするほど嬉しく、別府通いの汽船の窓でちらり見かわす顔と顔……と別府音頭を口ずさんだ。