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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

線上閱讀林 芙美子《放浪記(初出)(ほうろうき(しょしゅつ))》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 頁

青空文庫

いゝかも知れない。だが生れつき野性の私である。金満家の家風にペコペコする事は、腹を切るより切ない事だ。だが、お母さんの佗し気な顔を見ていたら、涙がダボダボあふれた。

腹がへっても、ひもじゅうないとかぶりを振っている時じゃないんだ、明日から、今から飢えて行く私達なのだ。

あゝあの拾参円はとゞいたか知ら、東京が厭になった。早くお父さんがゆとりをつけてくれるといゝ。九州もいゝな四国もいゝな。

夜更け、母が鉛筆をなめなめお父さんにたよりを書いているのを見て、誰かこんな体でも買ってくれる人はないかと思ったりした。

五月×日

朝起きたらもう下駄が洗ってあった。

いとしいお母さん!

大久保百人町のゆりのやと云う派出婦会に行く。

中年の女の人が二人店の間で縫いものをしていた。

人がたりなかったので、そこの主人は、デンピョウのようなものと地図を私にくれた。行く先は、薬学生の助手だと云う。

道を歩いている時が、一番ゆかいだ。五月の埃をあびて、新宿の陸橋をわたって、市電に乗ると、街の風景が、真に天下タイヘイにござ候と旗をたてゝいるようだ。此街を見ていると、何も事件がないようだ。