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せいだんじゅうにそう

政談十二社

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《政談十二社(せいだんじゅうにそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 24,626 字 · 48 頁

青空文庫

」と洞穴の奥から幽に、呼ぶよう、人間の耳に聞えて、この淫魔ほざきながら、したたかの狼藉かな。杖を逆に取って、うつぶしになって上口に倒れている、お米の衣の裾をハタと打って、また打った。

「厭よ、厭よ、厭よう。」と今はと見ゆる悲鳴である。

「この、たわけ奴の。」

段の上にすッくと立って、名家の彫像のごとく、目まじろきもしないで、一場の光景を見詰めていた黒き衣、白き面、清鶴に似たる判事は、衝と下りて、ずッと寄って、お米の枕頭に座を占めた。

威厳犯すべからざるものある小山の姿を、しょぼけた目でじっと見ると、予言者の鼻は居所をかえて一足退った、鼻と共に進退して、その杖の引込んだことはいうまでもなかろう。

目もくれず判事は静にお米の肩に手を載せた。

軽くおさえて、しばらくして、

「謂うことが分るか、姉さん、分るかい、お前さんはね、紛失したというその五百円を盗みも、見もしないが、欲しいと思ったんだろうね。可し、欲しいと思った。それは深切なこの婆さんが、金子を頂かされたのを見て、あの金子が自分のものなら、老人のものにしたいと、……そうだ。そこを見込まれたのだ。何、妙なものに出会して気を痛めたに違いなかろう。