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ぶんだんむかしばなし
文壇昔ばなし
谷崎 潤一郎
線上閱讀谷崎 潤一郎《文壇昔ばなし(ぶんだんむかしばなし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 9,802 字 · 20 頁
と芸者が尋ねると、「どうもリュウマチでね」とか何とか胡麻化していたが、その手で飲んだ杯を平気で誰にでも差した。私はその頃禁酒中だったので、幸いに難を免かれたが、芸者は勿論、勇敢な内藤氏はいつもそれを受けて返していた。私も或る日、草人と彼と三人で自動車で何処かへ出かけた時、「ちょっとその時計を見せて下さい」といわれて、仕方なく篏めていた腕時計を外して渡したことがあった。すると長江はそれを受け取って、散々いじくり廻した揚句、自分の手に篏めてみてから私に返した。これなどは、全く人を困らせるのが目的であるとしか思えなかったので、私はひどく腹を立てて、返された時計をわざと気味悪そうに指の先で摘まみ上げて見せた。そして車を降りてから、それをアルコールに漬けてから篏めた。それなどはまだいい方で、佐藤春夫は有楽座の廊下で彼から吸いかけの葉巻を与えられて、処置に窮していたのを現に私は傍で見ていた。佐藤は彼と師弟の関係にあり、彼の家の書生をしていた因縁もあるのだが、それにしても余りに非常識千万であった。尤も世間には内藤氏以上に勇敢な人もいるもので、武林無想庵は酔っ払った勢いで長江に抱き着き、「君は癩病だそうだねえ」