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ぶんがくじょうのふっこてきていしょうにたいして
文学上の復古的提唱に対して
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《文学上の復古的提唱に対して(ぶんがくじょうのふっこてきていしょうにたいして)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 6,051 字 · 12 頁
佐藤春夫氏のような作家が、「もののあわれ」について云々したりすると、そこに一応読者が生じるのは、古典文学の主潮としての「もののあわれ」そのものが知りたいというより、佐藤春夫氏という現代の作家に対する予備知識なり親しさなりで、そのとりあげた問題に一時たりとも目をとられるのである。批判をする準備は知識そのものとして弱いのであるから、受動的に読まざるを得ない。右の事実を綜合して見ると、今日、国文学の古典について云々することは、読者大衆の側からの鋭い視線にそなえる用意も比較的なくてすむし、本当の国文学研究者たちの、大衆的場面への批判的進出の懸念もさし当りはないという、一種異様な地の利を占めた安全地帯に身をよせる仕儀となるのである。林房雄氏等が、抽象的情熱としての万葉精神、王朝精神などと敢て云い得る根拠は全くこういう事情にあるのである。
三 例えば「さび」について
近頃は一方に万葉、王朝時代の精神ということが特殊な根拠の上に云われているけれども、現実に今日の日本人の生活感情の内部にものこっていて、美的感覚などの裡にマンネリズムとして余韻をひいているものは寧ろそれ以後の、「さび」