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ぶんがくいぜん
文学以前
豊島 与志雄
線上閱讀豊島 与志雄《文学以前(ぶんがくいぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 19,171 字 · 38 頁
――烏はひどくびっくりして、も一度やってみようと云いました。そしてまた競争をしましたが、烏が向う岸について、「亀さん、まだかい、」と叫びますと、近くの草のなかから、亀が首をだして、「もうここに着いてるよ、」と云いました。――烏はなおびっくりして、も一度、これきりも一度、競争をやりなおしてみようと云いました。そしてこんどは、烏は河の真中ほどまで飛んだ時、そこで翼をやすめて、「亀さんまだかい、」と叫びました。すると、河の両方の岸に、同じような亀の首がでて、「もうここに着いてるよ、」と同時に云いました。そして烏から見られると、両方とも、眼をぱちくりやって、首をちぢこめ、こそこそと水の中に隠れてしまいました……。
私見――この話のなかで、亀は狡猾な者となっているが、その狡猾さも一種ユーモラスな気味に包まれ、相手を見くびった不敵な大愚とでも云うべきものが目立つのは、亀がおのずから持つ徳の然らしむる所であろうか。結果から見れば策略の失敗だが、他から見て相似た二匹の亀であるところに、失敗は救われているのである。
第三の寓話――
印度のものであるが、内容はイソップの亀と鷹の話や狐と烏の話などと相通ずるものである。