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ぶんしょうそのた
文章その他
線上閱讀坂口 安吾《文章その他(ぶんしょうそのた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,564 字 · 10 頁
が、ちょっとしても、これくらいの高揚された精神から出発しない小説なんて、面白くもない。
私はいったいに、小説の文章はどんなギコチない悪文であろうと構わない、要は高い精神(洞察)から出発していればいいという考えであるが、名文名文と声を高うせられる向きへ、果して名文とは如何なるものかと伺いたいのである。出来うべくんば、わが国の小説から名文の一例を取り出して教示願えれば幸甚である。
私は、いわゆる名文らしい真の名文とは、次のようなものであろうと考えている。
ヂュリエット
Hist! ロミオ! Hist! ……
……おゝ、こちの雄鷹をば呼び返す鷹匠の声が欲しいなア、囚人の身ゆゑが嗄れて、高々と能う呼ばぬ。さもなかつたら、木魂姫が臥てゐる其の洞穴が裂くる程に、また、あの姫の空な声が予の声よりも嗄るゝ程に、ロミオロミオと呼ばうものを。
ロミオ
や、俺の名を呼ぶは恋人ぢや。あゝ、恋人の夜の声言は、白銀の鈴のやうにやさしうて、聞けば聞くほどなつかしい!
ヂュリエット
ローミオ!
ロミオ
恋人か?
ヂュリエット
明日、何時頃に使ひを送げうぞ!
ロミオ
九時に。
ヂュリエット
あい、ちがへはせぬ。