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ぶんしょうそのた
文章その他
線上閱讀坂口 安吾《文章その他(ぶんしょうそのた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 4,564 字 · 10 頁
かと思えば、
ヂュリエット
お前もう去しますか? ああ恋人よ、殿御よ、わが夫よ、恋人よ! きつと毎日消息して下され。これ一時も百日なれば、一分も百日ぢや。おお、そんな風に勘定したら、また逢ふまでには予は老年になつてしまはう!
といった具合に、切々として胸を打つ別離の言葉を述べさせる。まことに、美文と言いかつ名文と言うべきであろう。而して、これらの名文は決して単にひねくられただけの軽薄な文章ではなく、娘心の限りもない恋慕の情を良く洞察し表わしている。
ところで、日本の小説では、限りもなく恋愛小説もあろうと思うが、何人がこれに匹敵しうる恋の言葉を書いたであろう? 無論内攻した生活をくらしがちな日本人は――別してわが光輝ある日本帝国の憂欝なる作家ともなれば、こんな気のきいた言葉を現実に用いて恋を語ろうことなぞ夢にも有り得よう筈はない。併しそのことは西洋でも言い得るのではなかろうか。ジュリエットは十四歳未満の娘の筈だが、西洋の娘がいかほど早熟ているにしても、よしんば恋がミネル※(濁点付き片仮名ワ、1-7-82)の神力を与えたにしても、十三や十四の娘に斯んな気のきいた、綺麗な、そして胸をつく言葉がペラペラと喋りまくられようとは思えない。