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ぶんげいのてつがくてききそ
文芸の哲学的基礎
線上閱讀夏目 漱石《文芸の哲学的基礎(ぶんげいのてつがくてききそ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 49,519 字 · 98 頁
草は菫となり、蒲公英となり、桜草となり、木は梅となり、桃となり、松となり、檜となり、動物は牛、馬、猿、犬、人間は士、農、工、商、あるいは老、若、男、女、もしくは貴、賤、長、幼、賢、愚、正、邪、いくらでも分岐して来ます。現に今日でも植物学者の見分け得る草や花の種類はほとんど吾人の幾百倍に上るであろうと思います。また諸君のような画家の鑑別する色合は普通人の何十倍に当るか分らんでしょう。それも何のためかと云えば、元に還って考えて見ると、つまりは、うまく生きて行こうの一念に、この分化を促されたに過ぎないのであります。ある一種の意識連続を自由に得んがために(選択の区域に出来得るだけの余裕を与えんがために)あらかじめ意識の範囲を広くすると云う意味にほかならんのであります。私共はどの草を見ても皆一様に青く見える。青のうちでいろいろな種類を意識したいと思っても、いかんせん分化作用がそこまで達しておらんから皆無駄目である。少くとも色について変化に富んだ複雑の生活は送れない事に帰着する。盲眼の毛の生えたものであります。情ない次第だと思います。或る評家の語に吾人が一色を認むるところにおいてチチアンは五十色を認めるとあります。