輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
ぶんげいのてつがくてききそ
文芸の哲学的基礎
線上閱讀夏目 漱石《文芸の哲学的基礎(ぶんげいのてつがくてききそ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 49,519 字 · 98 頁
と云うのでしょう。そこでそれにはまず私と云うものがあると見なければならぬ、あなた方があると見なければならぬ。空間というものがあると見なければならぬ。時間と云うものがあると見なければならぬ。また因果の法則と云うものがあって、吾人を支配していると見なければならん。これは誰も疑うものはあるまい。私もそう思う。
ところがよくよく考えて見ると、それがはなはだ怪しい。よほど怪しい。通俗には誰もそう考えている。私も通俗にそう考えている。しかし退いて不通俗に考えて見るとそれがすこぶるおかしい。どうもそうでないらしい。なぜかと云うと元来この私と云う――こうしてフロックコートを着て高襟をつけて、髭を生やして厳然と存在しているかのごとくに見える、この私の正体がはなはだ怪しいものであります。フロックも高襟も目に見える、手に触れると云うまでで自分でないにはきまっている。この手、この足、痒いときには掻き、痛いときには撫でるこの身体が私かと云うと、そうも行かない。痒い痛いと申す感じはある。撫でる掻くと云う心持ちはある。しかしそれより以外に何にもない。あるものは手でもない足でもない。