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いけぶくろのかい

文藝別冊[総特集]岡本綺堂

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《文藝別冊[総特集]岡本綺堂(いけぶくろのかい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 72,671 字 · 149 頁

青空文庫

やがては髪結床を床屋、湯屋を風呂屋と呼ぶのが普通になるであろうと云っていると、果してその通りになった。

東京の湯屋は白湯を主としていたのであるが、明治二十年頃から温泉、鉱泉、薬湯、蒸風呂などの種類が殖えた。そのほかに江戸以来の干葉湯というのもあった。大体の構造は今も昔も変らないが、浴槽も流し場もすべて木造で、人造石やタイル張りのたぐいは殆ど見出されなかった。併し警視庁の命令によって、釜前は石造または煉瓦作りとなったので、出火の憂いは頗る減少した。江戸時代には湯屋から出火した例が甚だ多く、大風の日には臨時休業の札をかけたそうであるが幸いにそんな事はなくなった。

*

浴槽は高く作られて、踏み板を越えて這入るのが習で、その前には柘榴口というものが立っているから、浴客は柘榴口をくぐり、更に踏み板を越えて浴槽に入るのである。柘榴口には山水、花鳥、人物など、思い思いの彩色画が描いてあって、子供たちを喜ばせたものであるが、何分にもこの柘榴口が邪魔をするので、浴槽の内は昼でも薄暗く、殊に夜間などは燈光の不十分と湯気との為に、隣の人の顔さえもよくは見え分からず、うっかりと他人の蔭口などを利いていて、案外にもその噂の主がうしろに聴いていたと云うような滑稽を演ずることもあったが、明治二十一二年頃から今日のよう