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いけぶくろのかい
文藝別冊[総特集]岡本綺堂
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《文藝別冊[総特集]岡本綺堂(いけぶくろのかい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 72,671 字 · 149 頁
あなたはそんな形跡を認めませんでしたか。」
「知りませんね。」
なにを訊かれても一向に要領を得ないので、通信員の方でも見切りをつけたらしく、いい加減に話を打ち切って僕の座敷を出て行ってしまった。しかし、かの通信員からこれだけのヒントを与えられて、いかにぼんくらの僕でも少しは眼のさきが明かるくなった。もし彼が想像する通りに、かの男女学生らのあいだに普通以上の交際があるとすれば、ふたりの女学生の変死も単に食い物の中毒とばかりは認められないように思われて来た。そんなら誰がどうして殺したのか、二人の学生が二人の女学生を毒殺したのか。なんの目的でそんな怖ろしいことを仕いだしたのか。単純な僕の頭脳では、やはりその疑問を解決することは出来そうもなかった。
僕はともかくも二階を降りて行って、下の様子をそっとうかがうと、二人の学生は女学生たちの死体を横たえている八畳のうす暗い座敷に坐って、ゆうべとはまるで打って変わったようなしおれ切った態度で、白い布をかけてある死体を守っているらしかった。そのそばには眼を泣き腫らした女学生の一人がしょんぼりと坐っていた。宿の者が供えたらしい線香の煙りが微かになびいて、そこには藪蚊のうなり声もきこえないほどに森閑と静まり返っていた。