輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
いけぶくろのかい
文藝別冊[総特集]岡本綺堂
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《文藝別冊[総特集]岡本綺堂(いけぶくろのかい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 72,671 字 · 149 頁
で、いよいよ思い切るのかと念を押すと、六三郎はわっと泣き出しました。それから先きはなんといっても、泣くばかりで返事をしないので、みんなもしまいにはもてあましてしまって、まあ、よく考えて御覧というようなことで、その場はうやむやに済んでしまいました。
六三郎は自分の座敷へしょんぼりと帰って来ました。田舎にしては広い宿屋で、六三郎の座敷は南向きの縁側を前にしていたそうです。旧暦の八月ももう半ば過ぎで、日のうちはまだちっと暑いようですけれども、広い家の隅々や庭の木の蔭などは、昼間でもなんとなく冷やりとして、縁の下では頻りにこおろぎが鳴いていました。一つ座敷にいる広助という頓狂な半道役者は、うしろの森へ虫を捕りに行って留守でした。六三郎は縁側の柱にもたれて、庭の鶏頭の紅い花をじっとながめていましたが、いつか袂を顔にあてて、女の児のようにしくしく泣き出しました。どうで自分もいつまでもこの土地にいられる身の上ではない、おそくももう四、五日のうちにはここを立ち退かなければならないということは、最初から無論に承知しているんですが、その四、五日のあいだでもお初に逢えるだけ逢いたいと思っているところを、無理に堰かれようとするのですから、悲しいのも道理です。