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いけぶくろのかい

文藝別冊[総特集]岡本綺堂

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《文藝別冊[総特集]岡本綺堂(いけぶくろのかい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 72,671 字 · 149 頁

青空文庫

この時代の法によると、この罪人の殆ど全部が死罪に処せらるべき運命を荷っていた。

入牢中にお熊も泣いた。お菊は声を立てて毎日泣き叫んで、牢屋役人を困らせた。秋も段々に末になって伝馬町の牢屋でも板間の下でが鳴いた。家根の上を雁が鳴いて通った暗い冬空が近づくと共に罪人の悲しい運命も終りに近づいて来たが、何分にも死罪の多い裁判であるので、越前守も吟味に吟味を重ねて、その中から一人でも多くを救い出そうと努めたが、お常のほかには何うしても仕置を軽くする理由を見出すことが能なかった。

「もともとお内儀さんが悪いのでございます」と、お菊は泣いて訴えた。しかしお常は彼女の主人であった。被害者の又四郎に取っても母であった。階級制度の厳重なこの時代にあっては、実際お常がこの事件の張本人であるとしても、彼女は第一の寛典に浴すべき利益の地位に立っていた。

死罪は老中に伺いを立てなければならない、老中から更に将軍の裁可を受けなければならない。こうして時日を遷延している中に、何とかして死罪から一等を減ずる方法を見出させようと云うのが、所謂「上のお慈悲」であった。しかし今度の罪人はこのお慈悲を受けることが能なかった。