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どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
線上閱讀室生 犀星《文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子(どうじ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,454 字 · 357 頁
地方人らしい見物の人人がその生国をかいたり、年号を記したりしてあるのがあった。なかには北海道とか日向国などがあった。爪のあとには埃が溜っていて、鉛筆のあとも消えぎえになっているのもあった。「われは笈をみやこに負い来れど、いまわれ破れてむなしく帰る」とか又は「ここよりして、遠く故郷の空気をかぐ。此処よりしてわが願いは空し。」などと記されているのがあった。それらの都会の落伍者はかれはかれ自身の上にも感じるのであった。都会を去るもの去ろうとして悩むものが、かれの目にありありと考え出された。あるいは「明治四十五年十月五日武島天洋。」などと無意味にかいてあるのもあった。ただ、その年号というものが奈何に寂しくあたまにひびくことであろう。かれは暫くぼんやりと眺めていたとき、すぐ歳太郎の爺むさい顔をおもい出した。
かれが頂上に昇りつめたとき四囲の窓窓がすべて金網を張りつめられ、そこから投身できないようにしてあった。風は烈しかった。かれはそこから公園一帯の建物と道路と電燈のむらがりとを見おろした。道路には蟻のように群れた通行人のうごめく黒い諸諸の影が、砥のように白い道路の上に、伸びちぢみしながら、あるものは水の上にあるもののように、あるものは鳥のように蠢いてみえた。