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どうじ

文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子

室生 犀星

線上閱讀室生 犀星《文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子(どうじ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 177,454 字 · 357 頁

青空文庫

森としていた。

「え……」松岡はいつもの癖でこう言って尋ねた。

「何時ころですか。」

「さあ、さッキ十二時を打ったのを聞きましたが一時ころでしょうね。」

松岡はその声をうしろに聞いて、階段を上りはじめたが、そんなに経つかなと思い、時間の経つのが早いと考えた。しかし、いつもの松岡は四時には帰っていたが、きょうは遅くなって五時半だったことを思い出し、そうかなと思うた。

二階を上りつめると、往来へのとっつきの硝子雨戸が、鉄橋の電燈の余映で仄明るかった、いつも見るのだったが、今夜はそれがわけて際立って仄明るかった感じであったが、その腰硝子を横の方へ、北側の部屋の方へ何かかげが動いたように思われたが、よくあることで莫迦なと思うた。しかし何か量のある物かげであった。誇張して言ったら人かげであったかも知れない、――もう一歩、進んでいうとその北側へ逸れた逃げ方、かげの動き方が非常にのろかったのが、松岡にもふしぎに思われた。

「まさか?――」

松岡はそうも思うた。

三階へぎしぎし上りはじめた。

そして自分の部屋へ這入ると初めて先刻の影が或る幽かな物音を引いていたことを瞭乎と思い出した。