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やみのしらが

文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会

沼田 一雅

線上閱讀沼田 一雅《文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会(やみのしらが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 5,076 字 · 11 頁

青空文庫

翌朝になると早速裏木戸や所々と人の入った様な形跡を尋ねてみたが、何れも皆固く閉されていたのでその迹方もない、彼自ら実は少し薄気味悪くなり出したが、女子供に云うべき事でもないので家人へは一言も云わずにいた。その後幸い一と月ばかりは何の変事も起らなかった、がさすがにその当座は夜分便所に行く事だけは出来なかった、そのうち時日も経ったし職務上種々な事があったので、彼はいつしかそんな事も忘れていた、が、またそれは十月の初旬の頃であった、もう秋の風が肌に寒い頃だったがふと或晩、彼は矢張一時頃に便所へ行きたくなったので手燭をつけて行った、しかしその時は一切以前の出来事は忘れていた。同様に手燭を外に置いて内へ入って蹲踞んでいながら、思わず前の円窓を見て、フト一ヶ月ばかり前に見た怪しき老婆を思出した、さあ気味が悪くなって堪らないが、うんと度胸を据えて今夜はもし出たら一つよく見届けてやろうと思って簾から庭の外を見たが、闇に四隣寂寥として手燭の弱い燈に照らされた木立の影が長く地に印せられて時々桐の葉の落ちる音がサラサラとするばかり、別に何物も見えない。これは矢張自分の迷であったかと思って、悠然と其処を出て、手を洗って手拭で手を拭きながら、一寸庭を見ると彼は呀と驚いた、また立っていた