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みすじまちかいわい
斎藤茂吉随筆集
斎藤 茂吉
線上閱讀斎藤 茂吉《斎藤茂吉随筆集(みすじまちかいわい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 17,559 字 · 37 頁
私が少年にして露伴翁の「靄護精舎雑筆」などに取りつき得たのは、そういう医院書生の変り種の感化であった。
そういう入りかわり立ちかわり来る書生を父は大概大目に見て、伸びるものは伸ばしても行った。その書生名簿録も今は焼けて知るよしもないが、既に病歿したものが幾人かいて、私の上京当時撮った写真にそのころの名残を辛うじてとどめるに過ぎない。
四
その頃、蔵前に煙突の太く高いのが一本立っていて、私は何処を歩いていても、大体その煙突を目当にして帰って来た。この煙突は間もなく二本になったが、一本の時にも煙を吐きながら突立っているさまは如何にも雄大で私はそれまでかく雄大なものを見たことがなかった。神田を歩いていても下谷を歩いていても、家のかげになって見えない煙突が、少し場処をかえると見えて来る。それを目当に歩いて来て、よほど大きくなった煙突を見ると心がほっとしたものである。上京したての少年にとってはこの煙突はただ突立っている無生物ではなかったようである。
私が東京に来て、三筋町のほかにはやく覚えたのは本所緑町であった。その四丁目かに黒川重平という質屋があって、其処の二階に私の村の寺の住職佐原応和尚が間借をして本山即ち近江番場の蓮華寺のために奮闘していたものである。