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きられたさに

斬られたさに

夢野 久作

線上閱讀夢野 久作《斬られたさに(きられたさに)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 20,352 字 · 41 頁

青空文庫

……何か女中が無調法でも……ヘヘイ……」

「イヤ。そのような話ではない。ま……ズット寄りやれ。実は内密の話じゃがの……」

「ヘヘ……左様で御座いましたか。ヘイヘイ……それに又、申遅れましたが、先程は、お連れ様から、存じがけも御座いませぬ……」

「アハハ。実はそのお連れ様の事に就いて尋ねたいのじゃが……」

「ヘエヘエ……どのような事で……」

「その、お連れ様という奥方風の女は、どのような人相の女であったろうか……」

「……ヘエッ。何と仰せられます」

「その御連様というた女の様子が聞きたいのじゃ」

「……これはこれは……旦那様は御存じないので……」

「おおさ。身共はその女を知らぬのじゃ」

「……ヘエッ。これはしたり……」

主人が白髪頭を上げて眼を丸くした。六十余りと見える逞ましい大男であった。投げ卸し気味の髷の恰好から、羽織の捌き加減が、どことなく一癖ありげに見える……。

平馬は思い出した。ここいらの宿屋の亭主には渡世人上りが多いという話を……。

平馬の想像は中っていた。

それから平馬が物語る一部始終を聞いているうちに老人は、両手をキチンと膝に置いた貫碌のある見構えに変った。