輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
だんがいのさっかく
断崖の錯覚
黒木 舜平
線上閱讀黒木 舜平《断崖の錯覚(だんがいのさっかく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 12,483 字 · 26 頁
私が出かけた温泉地は、むかし、尾崎紅葉の遊んだ土地で、ここの海岸が金色夜叉という傑作の背景になった。私は、百花楼というその土地でいちばん上等の旅館に泊ることにきめた。むかし、尾崎紅葉もここへ泊ったそうで、彼の金色夜叉の原稿が、立派な額縁のなかにいれられて、帳場の長押のうえにかかっていた。
私の案内された部屋は、旅館のうちでも、いい方の部屋らしく、床には、大観の雀の軸がかけられていた。私の服装がものを言ったらしいのである。女中が部屋の南の障子をあけて、私に気色を説明して呉れた。
「あれが初島でございます。むこうにかすんで見えるのが房総の山々でございます。あれが伊豆山。あれが魚見崎。あれが真鶴崎。」
「あれはなんです。あのけむりの立っている島は。」私は海のまぶしい反射に顔をしかめながら、できるだけ大人びた口調で尋ねた。
「大島。」そう簡単に答えた。
「そうですか。景色のいいところですね。ここなら、おちついて小説が書けそうです。」言って了ってからはっと思った。恥かしさに顔を真赤にした。言い直そうかと思った。
「おや、そうですか。」若い女中は、大きい眼を光らせて私の顔を覗きこんだ。