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あたらしきシベリアをよこぎる
新しきシベリアを横切る
宮本 百合子
線上閱讀宮本 百合子《新しきシベリアを横切る(あたらしきシベリアをよこぎる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N3,點詞查義。
N3 · 進階 · 新字新假名 · 12,232 字 · 25 頁
午後六時十五分。
十月二十六日。
三ルーブリ十カペイキ。正餐二人前。
ひどくやすくなっている。一九二七年の十二月頃、行きのシベリア鉄道の食堂ではやっぱり三皿の正餐(スープ・肉か魚・甘いもの)が一人前二ルーブリ半した。今度は三十カペイキの鉱水ナルザンが一瓶あって、この価だ。おまけに、スープに肉が入っている! 正餐をやすくしてみんなが食べられるようにし、夕食は一品ずつの注文で高くしたのはソヴェトらしく合理的だ。
Yはヴャトカへ着いたら名物の煙草いれを買うんだと、がんばっている。
車室は暖い。疲れが出て、日本へ向って走っているのではなく、どこか内国旅行しているような呑気な気になってころがりつつ。
――気をつけなさい。ヴャトカは日本人の旧跡だから。自分がトンマですりに会って、シベリア鉄道の沿線に泥棒の名所があるなんて逆宣伝して貰っちゃ困るわよ。
――大丈夫さ! 心得ている。
暗くなってヴャトカへ着いた。ここはヴャトカ・ウェトルジェスキー経済区の中心だ。列車がプラットフォームへ止るや否や、Y、日本紳士をヘキエキさして「キム」に関係があるかもしれぬという名誉の猜疑心を誘発させたところの鞣外套をひっかけてとび出してしまった。