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しんじゅのことば
新樹の言葉
線上閱讀太宰 治《新樹の言葉(しんじゅのことば)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 29,156 字 · 59 頁
いったいに、弟妹たちは、この兄を甘く見ている。なめている風がある。長女は、二十六歳。いまだ嫁がず、鉄道省に通勤している。フランス語が、かなりよくできた。脊丈が、五尺三寸あった。すごく、痩せている。弟妹たちに、馬、と呼ばれることがある。髪を短く切って、ロイド眼鏡をかけている。心が派手で、誰とでもすぐ友達になり、一生懸命に奉仕して、捨てられる。それが、趣味である。憂愁、寂寥の感を、ひそかに楽しむのである。けれどもいちど、同じ課に勤務している若い官吏に夢中になり、そうして、やはり捨てられたときには、そのときだけは、流石に、しんからげっそりして、間の悪さもあり、肺が悪くなったと嘘をついて、一週間も寝て、それから頸に繃帯を巻いて、やたらに咳をしながら、お医者に見せに行ったら、レントゲンで精細にしらべられ、稀に見る頑強の肺臓であるといって医者にほめられた。文学鑑賞は、本格的であった。実によく読む。洋の東西を問わない。ちから余って自分でも何やら、こっそり書いている。それは本箱の右の引き出しに隠して在る。逝去二年後に発表のこと、と書き認められた紙片が、その蓄積された作品の上に、きちんと載せられているのである。