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しんのあいこくしん
新渡戸稲造論集
新渡戸 稲造
線上閱讀新渡戸 稲造《新渡戸稲造論集(しんのあいこくしん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 94,620 字 · 196 頁
ものであるが、独りソクラテスに限っては、こういう不始末が毫末もなかった。孟子のいわゆる大人にして赤子の心を失わない態度が、実に歴然としてその生活中に見えるのである。
第五には、輿論というか、俗論というか、いわゆる世評なるものに頓着しなかったことである。
ソクラテスの容貌は、性来とはいいながら、頗る滑稽なもので、常に物笑いの種となっていた。特に、衆人稠座の中に出ると、直に面の批評をされる。けれども、ソクラテスは、その冷評や罵詈の声を聞いても、少しも怒らない。のみならず、自分もまた一緒になって、声を立てて笑っていた。
また、ソクラテスはこういう風の外観的のことばかりではなく、時代の文学者仲間などには、その主義なり思想なりが、往々にして非難の的となり、甚しきは、この人を芝居の芸題などにして公々然と冷嘲を浴せかけたこともある。
けれども、ソクラテスは終始自若としていて、こせこせした弁護をせず、やはり自分も一緒にその芝居見物をして、衆人と共に笑い興じていたほどである。
かかる美点を一々列挙するならば、それこそ僕を換うるもなお足らぬであろう。勿論、ソクラテスだとて、全智全能の神ではないから、欠点を探れば相応に求め得たであろう。