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しんのあいこくしん
新渡戸稲造論集
新渡戸 稲造
線上閱讀新渡戸 稲造《新渡戸稲造論集(しんのあいこくしん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 94,620 字 · 196 頁
これに反して己れの為すべき事をも為さずして死を怖れぬという。その辺の熊だの八だのと択ぶところがない。こういう風に死を軽んずるという事は決して褒むるに足らぬと思う。
誰でも死を怖れるということは普通であるが、この死を怖れるという観念は、ただ生理学上あるいは生物学上のみの現象であろうとは僕には思われぬ。これには深い倫理的の意味のあるものと思う。死を怖るるとは即ち生を重んずるの意味だろうと思う。生を重んずるというは生きて為すべき義務を重んずる意味である。譬えていえば少女が男子に近くことを怖れる、その理由を訊せば知らない。この無意識に怖わいということは少女の節操を重んずる理由であるんで、人が死を怖れるのもこれと同じもので、無意識に生の義務を重んずるに由るものと思う。
己れの義務を全うした人には、死は怖くも恐ろしくもないものじゃないかと思う。かつまた死というものが、果してそう明かに生から区別すべきものかどうかという事も僕にはちょっと信じられない。無論死ねば肉体が朽ちる。物を言うておったものが言わなくなる。動いたものが静かになる、というような点からいうと非常な変化である。