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ふたりのとも

新潮日本文学1 森鴎外集

森 鴎外

線上閱讀森 鴎外《新潮日本文学1 森鴎外集(ふたりのとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,954 字 · 29 頁

青空文庫

初対面の挨拶が済んで私は来意を尋ねた。この人の事を私はF君と書く。F君の言う所は頗る尋常に異なるものであった。君は私とは同じ石見人であるが、私は津和野に生れたから亀井家領内の人、君は所謂天領の人である。早くからドイツ語を専修しようと思い立って、東京へ出た。所々の学校に籍を置き、種々の教師に贄を執って見たが、今の立場から言えば、どの学校も、どの教師も、自分に満足を与えることが出来ない。ドイツ人にも汎く交際を求めて見たが、丁度日本人に日本の国語を系統的に知った人が少いと同じ事で、ドイツ人もドイツ語に精通してはいない。それから日本人の書いたドイツ文や、日本人のドイツ語から訳した国文を渉猟して見たが、どれもどれも誤謬だらけである。その中でF君は私が最も自由にドイツ文を書き、最も正確にドイツ文を訳すると云うことを発見した。しかし東京にいた時の私の生活はいかにも繁劇らしいので、接近しようとせずにいた。その私が小倉へ来た。そこで君はわざわざ東京から私の跡を追って来た。これから小倉にいて、私にドイツ語を学びたいと云うのである。

これを聞いて私はF君の自信の大きいのに驚き、又私の買い被られていることの甚しいのに驚いて、暫く君の顔を見て黙っていた。