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ふたりのとも
新潮日本文学1 森鴎外集
線上閱讀森 鴎外《新潮日本文学1 森鴎外集(ふたりのとも)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,954 字 · 29 頁
と云って置いて、「畜生々々」と顧み勝に出て行く犬を叱っている。狆は帳場から、よそよそしい様子をして見ている。
「F君はどうしていますか」と、私は問うた。
「あなたがお世話なさるだけあって、変った方でございますね」と、お上さんは笑顔をして云った。
「わたくしが世話をするだけあって変っているのですって。それは困るなあ。一体どう変っています。」こう云いつつ、私は帳場の前に腰を掛けた。
「いいえ、大そう好い方でございますが、もうこんなに朝晩寒くなりましたのに、まだ単物一枚でいらっしゃいます。寒い時は、上からケットを被って本を読んでいらっしゃるのでございます。」お上さんは私に座布団を出して、こう云った。
「はてな。工面が悪いのかしら。」独言のように私は云った。
「そうじゃございません。お泊になってから少し立ちますと、今なら金があるからと仰ゃって、今月末までの勘定を済ませておしまいになった位でございます。」もう十一月に入っているから、F君は先月青年団から貰った金で前払をしたのである。
とにかく逢って見ようと思って、私は二階へ上がった。立見の家では、奥の離座敷に上等の客を留めることにしている。