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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
線上閱讀林 芙美子《新版 放浪記(しんぱん ほうろうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 247,330 字 · 497 頁
新聞社の広い受付に、このみじめな女は、かすれた文字をつらねて困っておりますからとおきまりの置手紙を書いた。
だが時事のドアは面白いな。クルリクルリ、まるで水車のようだ。クルリと二度押すと、前へ逆もどりしている。郵便屋が笑っていた。何と小さな人間たちよ。ビルディングを見上げると、お前なんか一人生きてたって、死んだって同じじゃないかと云っているようだ。だけど、あのビルディングを売ったら、お米も間代も一生はらえて、古里に長い電報が打てるだろう。成金になるなんて云ってやったら邪けんな親類も、冷たい友人もみんな、驚くことだろう。あさましや芙美子よ、消えてしまえ。時ちゃんは、かじかんでこの雪の中を野良犬のように歩いているんだろうに――。
(二月×日)
ああ今晩も待ち呆け。箱火鉢で茶をあたためて時間はずれの御飯をたべる。もう一時すぎなのに――。昨夜は二時、おとといは一時半、いつも十二時半にはきちんと帰っていた人が、時ちゃんに限ってそんな事もないだろうけれど……。茶ブ台の上には書きかけの原稿が二三枚散らばっている。もう家には十一銭しかないのだ。
きちんきちんと、私にしまわせていた十円たらずのお金を、いつの間にか持って出てしまって、昨日も聞きそこなってしまったけれど、いったいどうしたのかしらと思う。