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しんぱん ほうろうき

新版 放浪記

林 芙美子

線上閱讀林 芙美子《新版 放浪記(しんぱん ほうろうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 247,330 字 · 497 頁

青空文庫

ぴゅうぴゅうと風の吹くなかを、私一人が歩いているような気がする。

鬼でもいいから逢いたいものだ。慄えてくる。歩きながら泣いている。涙と云うものは妙なものだ。ただの水、なまぬるい水、ぞっこん心がしびれてくる水、人の情のようになぐさめてくれる水、誇張の水、歩きながら泣くのはまことに工合がいい。風がすぐ乾かしてくれる。ハンカチもいらない。袂も汚れない。

鍋町の文房具屋でハトロンの封筒も買って、郵便局で封を書いて、肺は歌うを朝日新聞に送る。何とかなるだろうと云う空想だけの勇気だ。

泣きながら歩いたので頬がつっぱるような気がする。匂いのいい文学的なクリームと云うやつはないかな。長い事、クリームもおしろいも塗った事がない。

果物屋は桜んぼうの出さかり、皿に盛って金十銭。

浅草に行く。

やたらに食物店ばかりが眼につく。ひょうたん池のところで、茄で玉子を二つ買って食べる。ハムスンの飢えと云う小説を思い出した。昼間からついているイルミネーションと楽隊、色さまざまなのぼりの賑わい。三館共通十銭也で、オペラに、活動に、浪花節。ここだけは大入満員のセイキョウだ。

私は急に役者になりたいと思った。