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めいじびじんでん

新編 近代美人伝 (上)

長谷川 時雨

線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (上)(めいじびじんでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,076 字 · 256 頁

青空文庫

それは太夫元がふと恐しい密謀を洩れ聞いたので、前途のある玉之助のために、実入りのよい興行を閉場てしまったのであった。それは、その日の玉之助の高座に用いる湯呑のなかへ、水銀を白湯にまぜておくという秘密を知ったからだった。

そんな事がかえって玉之助の名を高く揚げさせた。玉之助は子供心にも師に附かなければならないと考え、故人綾瀬太夫のもとへ弟子入りをした。何という名を与えようかと師匠が考えているうちに、お園は自分で綾之助と名附けたと言出した。このまけぬ気の腕白者は、出京早々から肩を入れてくれた久松町の医者某が、大連を催してくれた夜に、語りものの「鎌倉三代記」を絶句して高座に泣伏してしまった。全く彼女の記憶力は強かったので、彼女は無本で語り通していたのであった。

十二歳の春には、もはや真打となるだけの力と人気とを綾之助は集めてしまった。綾之助のかかる席の、近所の同業者は、八丁饑饉といってあきらめたほどであった。新川のある酒問屋の主人は贔屓のあまり、鉄道馬車へ広告することを案じだした。それも多くの人目をあつめたに違いなかったが、初真打綾之助に贈られた高座の後幕は、とうてい張りきれぬほどの数であったので、幾枚も幾枚も振りおとして掛けかえた。