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めいじびじんでん
新編 近代美人伝 (上)
長谷川 時雨
線上閱讀長谷川 時雨《新編 近代美人伝 (上)(めいじびじんでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,076 字 · 256 頁
その人は石井氏の友達の弟であった。綾之助を恋したために落第も二、三度した。机の上の洋燈の笠には彼女の名が黒々と書かれ、畳の上に頭をかかえて転げ廻る彼は、
「日本中の者が死んで、俺と彼女と二人ぎりになればよい」
と呟やきくらしていた。ある夜、石井氏と一緒に綾之助のかかる席へゆくと、綾之助は石井氏を木戸口に待ち迎えていて、氏の好みを聞いてその夜の語りものを改ためたりした。それを見て綾之助の心を悟った彼は絶望のあまり、冬の夜を一夜、品川海岸をさ迷っていたこともあった。その死にもしかねぬ彼の恋が綾之助の偽手紙をつくって石井氏の心を試した。
それが二人を結びつける強い綱になったのだった。苦悶は彼をたかめて、綾之助を失意のものにさせまいと、優しい思いやりまでして、彼は石井氏の両親が選んだ娘のあったのを、破約にさせるように骨を折った。そんなことがちらちらと噂に立つと、綾之助の高座へ悪戯をするものが出来た。石井氏の名を知って害めようとする者などもあった。養母の鶴勝を煽てるものもあった。石井氏は後日の健全な家庭をつくるためにと、綾之助を慰めておいて、雄々しくも志望を米国へ伸しに渡った。