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いちのくらさわなんりょう
新編 風雪のビヴァーク
松濤 明
線上閱讀松濤 明《新編 風雪のビヴァーク(いちのくらさわなんりょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 25,081 字 · 51 頁
三月二十九日 晴
明るい朝の光にようやく息を吹き返した。その名のごとく真っ赤に映えている赤石を眺めながら、手早く食事をして午前七時出発。ビバークも四晩を経過すると、全身に甚しい倦怠をおぼえ、肩の荷が今までになく身にこたえて足もとがふらふらする。一歩一歩慎重に踏みしめてコルに下降した。今日は風が穏やかで、なんなくコルを通過して尨大な兎への登りにかかる。リッジはところどころきわどいナイフエッジをなしているので、二、三ステップを叩いたが、大体において気軽な、平凡な登高であった。兎岳頂上で上河内や光岳ともお別れになる。それに名残りの一べつを投げて、大切なアイゼンを気にしながらガレ場を駆け下り、小さな小兎を乗り越えると中盛丸山とのコルである。中盛丸山は地図や文献で想像した以上に大きい。せわしい出発をしたので、充分な朝食をとらなかったため腹に力がなくなった。ここで前途に備えて充分腹をこしらえる。静かではあるが、馬鹿に冷たい風がどこからともなく廻り込んでくるので寒くて閉口した。しかし、しごくのどかな日和であった。
中盛丸山の登りはふくらはぎがつるほど急なので、西側に緩斜面を選んで廻って登った。