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まさことまき

方子と末起

小栗 虫太郎

線上閱讀小栗 虫太郎《方子と末起(まさことまき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,517 字 · 24 頁

青空文庫

が、そうかといって、それだけでは殺人の理由にはならない。

他には、まだ詮索すれば、謙吉の不満もあったが……。

それは、世の常の養子の例に洩れず、まだおゆうの名義に電話までがなっていることだ。

ちょうど四年まえ、五月の末の鬱陶しい雨の朝だった。おゆうの病室になっている洋間のなかで、おゆうは、心臓を刺されて悶える色もなく、かすかに血を吐いただけで眠るように死んでいた。そして傍らには、祖母のまきが面彫りをにぎって、返り血に染み失神していたのである。

しかしそれなり、祖母の意識は旧どおりにならなかった。というよりも、おそらく一時の激情から醒め娘の死体を見、はっと、我にかえったときの衝撃であろうか、それなり、手足もうごけず口も利けず、ただ見、聴くだけの屍のようになってしまった。

その室は、まきの口から病室になったもので、可愛いいおゆうの病状を悪化させまいとして、扉に鍵をおろし謙吉を遠ざけていた。その夜も、鍵は鍵孔に差しこまれたままで、もちろん、合鍵でも開けられぬ状態にあった。しかも、庭に面した窓はかたく鎖され、湿った窓したの土にも足跡はない。

そうして、すべてがまきを指し、だが、そうなっても、なぜ後家を守ってまでも育てあげた、一人娘を殺したかという動機には、いくら探っても適確なものがない。