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りょこうのこんじゃく

旅行の今昔

幸田 露伴

線上閱讀幸田 露伴《旅行の今昔(りょこうのこんじゃく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,174 字 · 5 頁

青空文庫

して見ると、いくら野趣が減殺されようが何様しようが、今日は今日で、何も今を難じ古を尚ぶにも当らないから、矢張り文明の利益は使うだけ使った方が宜さそうな事です。

だが、昔の俳人歌人の行脚といったようなことには、商買的の気味も有りましたろうが、其の中におのずから苦行的修練的の真面目な意味が何分か籠って居て、生やさしい戯談半分遊山半分ばかりでは出来無かった旅行なのでした。其の修業的旅行という事は、文明の威力で津々浦々山の奥谷の底までが開けた結果として、今日では先ず日本内地では殆ど成り立たない事になりました。修学旅行というが如きもなかなか修業的旅行とは云えません。すべてが発達し開明した結果、今日では日本内地の旅行は先ず昔の所謂「江の島鎌倉見物」「石尊参り」「伊勢詣」「大和めぐり」「箱根七湯めぐり」などという旅行と同様、即ち遊山旅と丁度同様になって居るかと思います。可愛い子に旅行をさせろなどという語がありますが、今日では内地の旅行はすべてが遊山旅行になって居ますから、可愛い子に旅をさせたところで何にもなりません。却って宿屋で酒を飲みおぼえたり女にからかったりする事を知り初める位が結局です。