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にほんのでんせつ

日本の伝説

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《日本の伝説(にほんのでんせつ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 104,931 字 · 207 頁

青空文庫

そうして頼むと必ずよくなったという話であります。(上総国誌稿。千葉県君津郡小櫃村俵田字姥神台)

姥神はまた子安様ともいって、最初から子供のお好きな路傍の神様でありました。それがだんだんに変って来て、後には乳母を神に祀ったものと思うようになり、自分が生きているうちに咳で苦しんだから、お察しがあって子供たちの百日咳も、頼むとすぐに救うてもらうことが出来るように、信ずる人が多くなったのであります。

下総の臼井の町でも、城趾から少し東南に離れた田の中に、おたつ様という石の小さなほこらがあって、そこには村の人たちが麦こがしとお茶とを上げて、咳の出る病を祈っておりました。臼井の町の伝説では、おたつ様は昔臼井竹若丸という幼い殿様の乳母でありました。志津胤氏という者が臼井の城を攻め落した時に、おたつはかいがいしく若君を助けて遁れさせ、自分はこのあたりの沼の蘆原の中に隠れていました。追手の軍勢が少しも知らずに、沼の側を通り過ぎようとしたのに、あいにく咳が出たので見つかって、乳母のおたつは殺されてしまいました。それが恨みの種であるゆえに、死んで後までも咳をする子供を見ると、治してやらずにはおられぬのであろうと、土地の人たちも考えていたようであります。