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あべいちぞく

日本の文学 3 森鴎外(二)

森 鴎外

線上閱讀森 鴎外《日本の文学 3 森鴎外(二)(あべいちぞく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 68,545 字 · 140 頁

青空文庫

それが落成すると、六十一になる父滄洲翁と、去年江戸から藩主の供をして帰った、二十九になる仲平さんとが、父子ともに講壇に立つはずである。そのとき滄洲翁が息子によめを取ろうと言い出した。しかしこれは決して容易な問題ではない。

江戸がえり、昌平黌じこみと聞いて、「仲平さんはえらくなりなさるだろう」と評判する郷里の人たちも、痘痕があって、片目で、背の低い男ぶりを見ては、「仲平さんは不男だ」と蔭言を言わずにはおかぬからである。

滄洲翁は江戸までも修業に出た苦労人である。倅仲平が学問修行も一通り出来て、来年は三十になろうという年になったので、ぜひよめを取ってやりたいとは思うが、その選択のむずかしいことには十分気がついている。

背こそ仲平ほど低くないが、自分も痘痕があり、片目であった翁は、異性に対する苦い経験を嘗めている。識らぬ少女と見合いをして縁談を取りきめようなどということは自分にも不可能であったから、自分と同じ欠陥があって、しかも背の低い仲平がために、それが不可能であることは知れている。仲平のよめは早くから気心を識り合った娘の中から選び出すほかない。翁は自分の経験からこんなことをも考えている。