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あべいちぞく

日本の文学 3 森鴎外(二)

森 鴎外

線上閱讀森 鴎外《日本の文学 3 森鴎外(二)(あべいちぞく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 68,545 字 · 140 頁

青空文庫

手にはみやげに切らせて来た緋桃の枝を持っている。「まあ、お忙しい最中でございますね」

お豊さんは尉姥の人形を出して、箒と熊手とを人形の手に挿していたが、その手を停めて桃の花を見た。「おうちの桃はもうそんなに咲きましたか。こちらのはまだ莟がずっと小そうございます」

「出かけに急いだもんですから、ほんの少しばかり切らせて来ました。たくさんお活けになるなら、いくらでも取りにおよこしなさいよ」こう言ってご新造は桃の枝をわたした。

お豊さんはそれを受け取って、妹に「ここはこのままそっくりしておくのだよ」と言っておいて、桃の枝を持って勝手へ立った。

ご新造はあとからついて来た。

お豊さんは台所の棚から手桶をおろして、それを持ってそばの井戸端に出て、水を一釣瓶汲み込んで、それに桃の枝を投げ入れた。すべての動作がいかにもかいがいしい。使命を含んで来たご新造は、これならば弟のよめにしても早速役に立つだろうと思って、微笑を禁じ得なかった。下駄を脱ぎすてて台所にあがったお豊さんは、壁に吊ってある竿の手拭いで手をふいている。そのそばへご新造が摩り寄った。

「安井では仲平におよめを取ることになりました」