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あべいちぞく
日本の文学 3 森鴎外(二)
線上閱讀森 鴎外《日本の文学 3 森鴎外(二)(あべいちぞく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 68,545 字 · 140 頁
そして口々に「岡の小町が猿のところへ往く」と噂した。そのうち噂は清武一郷に伝播して、誰一人怪訝せぬものはなかった。これは喜びや嫉みの交じらぬただの怪訝であった。
婚礼は長倉夫婦の媒妁で、まだ桃の花の散らぬうちに済んだ。そしてこれまでただ美しいとばかり言われて、人形同様に思われていたお佐代さんは、繭を破って出た蛾のように、その控え目な、内気な態度を脱却して、多勢の若い書生たちの出入りする家で、天晴れ地歩を占めた夫人になりおおせた。
十月に学問所の明教堂が落成して、安井家の祝筵に親戚故旧が寄り集まったときには、美しくて、しかもきっぱりした若夫人の前に、客の頭が自然に下がった。人にからかわれる世間のよめさんとは全く趣をことにしていたのである。
翌年仲平が三十、お佐代さんが十七で、長女須磨子が生まれた。中一年おいた年の七月には、藩の学校が飫肥に遷されることになった。そのつぎの年に、六十五になる滄洲翁は飫肥の振徳堂の総裁にせられて、三十三になる仲平がその下で助教を勤めた。清武の家は隣にいた弓削という人が住まうことになって、安井家は飫肥の加茂に代地をもらった。