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あべいちぞく
日本の文学 3 森鴎外(二)
線上閱讀森 鴎外《日本の文学 3 森鴎外(二)(あべいちぞく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 68,545 字 · 140 頁
その風鈴が折り折り思い出したようにかすかに鳴る。その下には丈の高い石の頂を掘りくぼめた手水鉢がある。その上に伏せてある捲物の柄杓に、やんまが一疋止まって、羽を山形に垂れて動かずにいる。
一時立つ。二時立つ。もう午を過ぎた。食事の支度は女中に言いつけてあるが、姑が食べると言われるか、どうだかわからぬと思って、よめは聞きに行こうと思いながらためらっていた。もし自分だけが食事のことなぞを思うように取られはすまいかとためらっていたのである。
そのときかねて介錯を頼まれていた関小平次が来た。姑はよめを呼んだ。よめが黙って手をついて機嫌を伺っていると、姑が言った。
「長十郎はちょっと一休みすると言うたが、いかい時が立つような。ちょうど関殿も来られた。もう起こしてやってはどうじゃろうの」
「ほんにそうでござります。あまり遅くなりません方が」よめはこう言って、すぐに起って夫を起しに往った。
夫の居間に来た女房は、さきに枕をさせたときと同じように、またじっと夫の顔を見ていた。死なせに起すのだと思うので、しばらくは詞をかけかねていたのである。
熟睡していても、庭からさす昼の明りがまばゆかったと見えて、夫は窓の方を背にして、顔をこっちへ向けている。