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あべいちぞく

日本の文学 3 森鴎外(二)

森 鴎外

線上閱讀森 鴎外《日本の文学 3 森鴎外(二)(あべいちぞく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 68,545 字 · 140 頁

青空文庫

このとき僧は鉄鉢の水を口にふくんで、突然ふっと閭の頭に吹きかけた。

閭はびっくりして、背中に冷や汗が出た。

「お頭痛は」と僧が問うた。

「あ。癒りました」実際閭はこれまで頭痛がする、頭痛がすると気にしていて、どうしても癒らせずにいた頭痛を、坊主の水に気を取られて、取り逃がしてしまったのである。

僧はしずかに鉢に残った水を床に傾けた。そして「そんならこれでお暇をいたします」と言うや否や、くるりと閭に背中を向けて、戸口の方へ歩き出した。

「まあ、ちょっと」と閭が呼び留めた。

僧は振り返った。「何かご用で」

「寸志のお礼がいたしたいのですが」

「いや。わたくしは群生を福利し、慢を折伏するために、乞食はいたしますが、療治代はいただきませぬ」

「なるほど。それでは強いては申しますまい。あなたはどちらのお方か、それを伺っておきたいのですが」

「これまでおったところでございますか。それは天台の国清寺で」

「はあ。天台におられたのですな。お名は」

「豊干と申します」

「天台国清寺の豊干とおっしゃる」閭はしっかりおぼえておこうと努力するように、眉をひそめた。「わたしもこれから台州へ往くものであってみれば、ことさらお懐かしい。