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あべいちぞく

日本の文学 3 森鴎外(二)

森 鴎外

線上閱讀森 鴎外《日本の文学 3 森鴎外(二)(あべいちぞく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 68,545 字 · 140 頁

青空文庫

もし悪い人に見つけられてはならぬからでございます。あの塩浜の持ち主とやらの家まで往って、お湯をもらってまいりましょう。そして藁や薦のことも頼んでまいりましょう」

女中はまめまめしく出て行った。子供は楽しげにやら、乾した果やらを食べはじめた。

しばらくすると、この材木の蔭へ人のはいって来る足音がした。「姥竹かい」と母親が声をかけた。しかし心のうちには、柞の森まで往って来たにしては、あまり早いと疑った。姥竹というのは女中の名である。

はいって来たのは四十歳ばかりの男である。骨組みのたくましい、筋肉が一つびとつ肌の上から数えられるほど、脂肪の少い人で、牙彫の人形のような顔に笑みを湛えて、手に数珠を持っている。我が家を歩くような、慣れた歩きつきをして、親子のひそんでいるところへ進み寄った。そして親子の座席にしている材木の端に腰をかけた。

親子はただ驚いて見ている。仇をしそうな様子も見えぬので、恐ろしいとも思わぬのである。

男はこんなことを言う。「わしは山岡大夫という船乗りじゃ。このごろこの土地を人買いが立ち廻るというので、国守が旅人に宿を貸すことを差し止めた。