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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁
女は、女中が先ほど持ってきた白い西洋皿に盛った真紅な苺の実を銀の匙でつつきながら、おとなしく口に持っていっている。
「今夜ぜひ逢う約束でもしている人があるのか?」私はそういって訊ねた。
「ちがいます」
「逢う約束の人がなければ、ここにいたっていいのじゃないか。手紙でこそ月に幾度となく話はしていたけれども二年近くも逢わなかったのだから私にいろんな話したいことがあるのはあんたもようわかっているはずだ」
「そやから帰ってから、後でいいます」
「あんた、何をいっているのか、私には少しもわからない。かえってから後にいうとは。そんなら今ここでいったらいいじゃないか」
「ほんなら、私帰ってすぐあとで使いに手紙を持ってこさします」
「せっかくここへ来て、すぐまた帰るというのが私にはわからないなあ。あんた、もう私に逢わないつもりなの?」
「ちがいます。私またあとで逢います」
「なあんのことをいっているのだか、私には少しも合点がゆかぬ。しかしまあいい。それじゃお前の好きなようにおしなさい。どんなことをいってくるかあんたの手紙を持ってくるのを待っているから。必ず使いをよこすねえ」
「ええ、これから二時間ほどしてから俥屋をおこします。