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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁
あとはおめもじのうえにて」と書いてある。状袋を裏返してみたが、処も何も書いていない。
「お今さん、どんな使いがこれを持ってきた」女中に訊ねると、
「さあ、わたし、どや、よう知りまへんけど、何でも年とった女の人のようどした」
「年とった女。まだ待っているだろうな」私にはすぐには合点がゆかなかった。
「へえ、待ってはります」
それで、急いで玄関のところに立ち出てみると、門の外にいるというので、また玄関から門のところまで、長い敷石の道を踏んで出てみると、そこには暗がりの中に彼女の母親が佇んでいた。
「あっ、おかあはんですか。お久しゅうお目にかかりません」と思わず懐かしそうにいった。使いが母親であったので、私はもう、すっかり安心して好い心持ちになってしまった。
「えらい御返事が遅うなって済まんさかい、ようお詫りをいうておくれやすいうて、あの娘がいうていました」母親は、門口の、頭のうえを照らしている電燈の蔭に身を隠すようにしながらいう。
「どうも、こんな夜ふけに御苦労でした。じゃすぐ一緒に行きますから、ちょっと待っていて下さい、私着物を着てきますから」
私はまた座敷に取って返して衣服を更め、女中には、都合で外へ泊ってくるかも知れぬといい置いて、急いでまた出て来た。