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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁
そういって、宿の名とところとをくわしく教えると、母親は少し考えるようにして、明日はちょっと都合が悪くてゆけないから明後日はきっと訪ねて行きますという。その約束を堅めて、
「あんたはんもまた風邪ひかんように早う往んでお休みやす」
「お母はんもあまり心配せんと。そのうえ自分がまた患ったら困りますよ」
挨拶を交わして、そのままそこで立ち別れた。日はもうとっぷり暮れて、寒い寒い乾いた夕風が薄暗の中を音もなく吹いていた。
七
母親の居処が知れて、まず一と安心したものの、路次の出口の女房のはなしでは、つい五、六日前に先の二階借りのところから引き移って行ったという。それを母子の者はなぜ私に対して隠していたか、考えて見ると水くさいしうちである。それにさっき飯田と表札を打った家の潜り戸を開けて母親が中から出て来ながら、ちょうどこちらが押し入ってゆこうとするのを先廻りをして入れまいとでもするような様子をしたのが疑ってみればみるほど変である。まあ、しかし、そんなことをあくどく根問いせぬ方が美しくっていい、委細は明後日宿へ訪ねて来た時に、よくわかるように、なんどりと話してみよう、と、それからそれへと、疑ってみたり、また思いなおして安心してみたりしながら宿へ帰って来た。