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うつりが

日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江

近松 秋江

線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁

青空文庫

何によらず対手の仕向けが少し気に入らないと、すぐ皮肉に横へ外れて出ようとする風の老婆と見たので、昨日の朝も、向うから、及ばずながら、仲に入って話してみましょうといってくれたのを幸いにちょっと頼んでおいたゆきがかりがあったから、そういって一言いいわけをすると、婆さんはぎょっと顔中を顰めたように意地の悪そうな眼をむいて、

「いいや、こんなことに年寄りの出るところやおへん」と一克そうに、わざと仰山に頭振りをふったかと思うと、

「内の伜は年はまだ若うおすけどな、こんなことには私がよう仕込んでますよって、おためにならんようには取り計らいまへんやろ」とどこまでも偉い者のようにいう。

しかし私は、女さえ自分の物になるならば、どこまで阿呆になっていても辛抱できるだけ辛抱する気で、婆さんが、どんなに偉そうなことをいったり、凄まじい気焔を吐いても、ただ「へいへい」して、じっと小さくなってそこに坐っていた。そして、今のこのざまが、見も知らぬ人間の前でなかったならば、自分にはとても、こうして我慢していられないであろうと思うと、それが東京と遠く離れた京都の土地であるのが、せめてもの幸いであった。