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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁
が通じないことはあるまい。そう思い返して時々電話をかけて都合を訊いたり、自分で入口まで出かけて往ったことも一度や二度でなかったが、小面の憎い女衆はよく私の顔を覚えていると思われて、卑下しながら入口に立った私を見ると、わざと素知らぬ振りをして狭い通り庭の奥の方で働いていた。そして幾度も案内を乞うと、やっと渋々出て来て、「太夫どすか、今いやはりゃしまへん」といって、それっきり中戸の奥にまた引っ返ってしまうのであった。
女主人は今から二十年ほど前まで祇園で薄雲太夫といって長い間全盛で鳴らしたもので、揚屋の送り迎えに八文字を踏んで祇園街を練り歩いていたそのころ廓の者が太夫を尊敬して呼び習わした通称を今でもなお口にして太夫といっているのであった。
電話で訊くと、今すぐならいるというので夜遅く遠くから急いで行ってみると、今まで内にいたがまたどこかへ出て往ったというよっなことがあって、私はほとんど耐えがたい屈辱を感じていたが、彼らの前にはどんなに馬鹿になっていても、それほど苦痛とも思わなかった。
そのうち女の居所が知れて、本人の心の奥底も分り幾らか自分にも心に張合いか出来たせいか、今までよりも少し勇気づいて、たとい効のないことにしてももとの女主人のところにもいって話してみようという気になって、また電話で都合を訊くと、