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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
線上閱讀近松 秋江《日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江(うつりが)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 152,306 字 · 300 頁
それに、自分の観察したところによると、女は自分の方から進んでいって決して男に深くなるような気質は持っていない。男に惚れるような女ならばかえってまた手を施すことも出来るのであるが、彼女に限ってそういう風は少しもなかった。どうせ卑しい勤めをしているのであるから、いろんな男に近づきはあるにちがいない。どんな男があっても構わぬ。自分は猜疑もしなければ、嫉妬もせず、ただ一と筋に真情を傾けて女の意のままに尽してやってさえいれば、いつかはこちらの真情が向うに徹しなければならぬ。ことさらにああいう稼業の女はそんな嫉妬がましいことをいう男に対して厭気をさすのである。そう思って私は、三野村という男のことを全く知らぬこともなかったけれど、そんなことは彼女に向って戯談にもあまり口に出したことはなかったのである。また私自身にしても、そんなことを思ってみるさえ堪えられない焦躁しさに責め苛まれるので、そんな悩ましい欝懐をばなるべくそのままそっと脇へ押しやっておくようにしておいたのであった。が、今女あるじから初めて、入り組んだその男のことを聞くにつけ思い起したのは、去年の五月のころ女の家にいた時仏壇の奥から出て来た写真の和服姿の男がそれであろうと、そう思うと、その男と彼女との仲の濃やかな関係がはっきり象を具えて眼に見えて来た。